大阪へ
August 31, 2007

柔らかな冬の気配が漂う12月の始め。出会いは突然やってきた。
当時働いていた会社の社長から、「猫飼う?」と何の脈絡もなく声をかけられた。聞けば元クライアントの方が、生まれた子猫の貰い手を探しているとのこと。ためらいなく貰うことを決めた。ずっとこんな日を待っていたんだ。相変わらずうっかり屋のサンタクロースが、クリスマス前に最高のプレゼントを届けてくれたのだ。クリスマスムードで徐々に華やいでいく街の風景のように、わたしの心も浮き立っていた。
引取りに行くのは2ヶ月後に決まった。お母さん猫の愛情とお乳をたっぷり貰って、わたしの元へやってくる。それまでは日に何度も、飽きることなく子猫の写真を見て過ごした。それと同時に、猫に関する情報をなんでも収集した。苦労話や問題点を知ると、膨らんでいた気持ちが急にしぼんで、不安がちらちらと顔をのぞかせるのだが、写真に写る無邪気な姿や、その小さくて真っ黒な瞳を見ていると、不安もどこかへすぅっと消えていった。
名前はハナレグミのMUSICAという曲からもらうことにした。日常に寄り添う曲の多い彼には珍しく、夢と現実の狭間をたゆたうような、どこか遠くの原風景を紡ぐ物語のような曲。そして音楽への深い愛に満ちた曲。切なく美しいこの曲がずっと好きだったし、なにより音楽が好きだった。音楽を聴いてムジカを想い、ムジカを呼んで音楽を想うのだ。
気弱な太陽が北風を前に申し訳なさげな顔を見せる、1月の終わり。マフラーをぐるぐるに巻いたわたしは、真新しいペットキャリーバッグを持って大阪の街に立っていた。ムジカを迎えに、はるばる大阪までやって来た。ムジカはこの街にいる。とうとう会えるのだ。
【今日のMUSICA】
ハナレグミ MUSICA